西アフリカを中心に、致死率の非常に高い伝染病、エボラ出血熱が大流行しています。世界保健機構(WHO)の勧告もでる状況で、日本は大丈夫でしょうか。気になる病気の伝染性や危険度などをご紹介します。
●高い致死率のエボラ出血熱
エボラ出血熱がリベリア、ギニア、シエラレオネ、ナイジェリアで大流行し、ついに死亡者が1000人を超えました。先月、WHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態宣言」を宣言し、リベリア、シエラレオネでは非常事態宣言が発令されています。
エボラ出血熱とは、エボラウイルスに感染することで発症する急性感染症です。国際的にはエボラウイルス病(Ebola virus disease: 頭文字を取ってEVDと呼ぶ)と呼称されることが多くなっています。
このウイルスに感染すると、2日から3週間(通常は1週間)の潜伏期間を経て、突然の発熱、筋肉痛、頭痛、喉の痛みなどが出てきます。その後、下痢嘔吐、発疹、肝臓・腎臓機能の異常が現れ、さらに重症になると吐血、下血などが起こります。致死率は80%とも言われ、今後、さらに死者が増える可能性もあります。
●感染力の低いエボラウイルス
EVDは元々、コウモリの一種が持っていたウイルスで、感染力はさほど高くはありません。流行地では、EVDに感染したオオコウモリ、サル、アンテロープ(牛の一種)など死体や生肉などに触れた人が感染し、その人から身近な人へと人間社会への感染が広がっていると考えられています。
人間を介した感染も限定的です。
ウイルスに感染し、症状の出ている人の体液、汚物、嘔吐物などと直接接触した場合に感染の危険が出てきますが、一般の旅行者などがこういう状況になることはあまり多くないでしょう。この他、患者の体液などで汚染された注射針に誤って触れることなどでも感染します。インフルエンザのように、咳やくしゃみを介しての空気感染はありません。
●世界へ広がる感染症
とはいえ、現状では有効な治療法がなく、ワクチンも開発途中です。一度、感染してしまうと対症療法しかなく、致死率が高いため、感染の広がりには注意しなければなりません。
近年は飛行機による移動で、感染に気がつかない患者がさまざまな国に入国する事態も考えられます。リベリアからナイジェリアに飛行機で到着したアメリカ人が空港で倒れて亡くなったり、シエラレオネで感染したサウジアラビア人が帰国後に死亡するなどの症例が出ています。
現地では医療環境が整わず、感染の封じ込めには数ヶ月かかると言われています。複数の航空会社が流行国への運行を中止するなど、水際阻止の動きが活発です。日本の外務省も感染症危険情報を出し、不要不急の渡航を延期するように求めています。
以上、致死率の高さで怖れられているエボラ出血熱の現状を解説しました。感染についての正しい知識を持ち、むやみに怖れることなく正しい対応をしたいものです。また危険地域には近づかないことも重要でしょう。