現在、中国では鳥インフルエンザが流行し、鳥から人への感染だけでなく、小規模ながら人から人への感染が確認されています。今後、新型インフルエンザに移行し、日本にも流行がやってくるかもしれません。そこで今月は新型インフルエンザについて考えてみます。
●鳥のインフルエンザが人間へ
「鳥インフルエンザ」とは、水鳥などを中心とした鳥類がA型インフルエンザに感染してかかる病気のことです。野鳥はもちろん、鶏、七面鳥、うずら、アヒル、ペットの小鳥でも感染します。
今回、中国で見つかった鳥インフルエンザA(H7N9)は、基本的に人間には感染する可能性が知られていないウイルスでしたが、2013年4月にWHOが中国で鳥から人への感染が起きたことを公にしました。その後も鳥インフルエンザA(H7N9)の感染患者の数が増え続け、それに伴って死亡者の報告も出ています。現在のところ、比較的、高齢者の死亡例が多いようです。
●人から人への感染があれば「新型インフルエンザ」に
遺伝子の変異により、鳥インフルエンザウイルスが鳥から人だけでなく、人から人へも感染するようになると、「新型インフルエンザ」と呼ばれます。今のところ、中国でも人から人への感染が続いているという調査報告はなく、WHOも中国への渡航や貿易の制限勧告などは行っていません。
また中国本土では鶏肉からの感染を怖れて、鶏肉を食べないようにしている人が増えています。しかし鶏肉や鶏卵を食べた結果、鳥インフルエンザに感染したという事例はこれまで報告されたことがありません。日本でも中国産鶏肉を避ける人がいるかもしれませんが、基本的に国産の鶏肉でも、中国から輸入された鶏肉でも、中心部までしっかり火を通せば問題はありません。
なお日本では鶏卵を生のまま食べる人が少なくありませんが、国産の管理された卵でのみ可能な食習慣です。日本以外の国では、サルモネラ菌などの感染の恐れがあるので、すべての卵は必ず火を通して食べています。
●国内でもワクチンの研究がスタート
2009年に新型インフルエンザ(パンデミック2009H1N1)の感染が知られ、一時期、日本でもパニックになりかけたことがありました。しかし、その後に感染が広がり、一般のインフルエンザと同じ程度の扱いに落ち着いたという経緯があります。
現在、東京都にある国立感染症研究所では、中国疾病予防管理センターから入手したウイルス株を使って、ワクチン株の製造準備を始めています。インフルエンザの治療薬として知られているタミフル・リレンザの備蓄も各地方自治体で行われているので、あまり慌てる必要はありません。
新型インフルエンザなど、よくわからない病気は怖いという印象を持ちがちですが、インフルエンザ予防の基本は手洗いとうがい、そして健康な生活を通して自然治癒力を高めておくことに尽きます。
以上、鳥インフルエンザと新型インフルエンザについての概要をご紹介しました。最新情報は国立感染症研究所や厚生労働省のサイトで確認できます。時々、チェックをしておくと安心です。